ヨコワ　　　　　　　　　　　　　　　　　　

大きな魚が台所にゴロリ。

「おっ！だれが釣った？」と私。

「わたし、お魚屋さんで。ヨコワっていうカツオよ」と義弟のかみさん。

「レレッ！これマグロですよ、クロマグロの子。魚体に横向きの輪模様があるでしょう、だからヨコワ。カツオは縦て模様」　　　　　

義弟家の孫誕生祝賀会。

ワイワイ、ガヤガヤのなか、ジイさん（義弟）がはりきって魚を三枚におろす。出刃が、ズボッ、ズボッとマグロ身に出入りする。名刺大の分厚い刺し身が大皿に盛られる。数枚で腹がふくれた。魚体の部位を確かめつつ味わったがどこを食べてもおいしかった。

エンターテイナーの赤ちゃんは、海にちなんだ名前がついた女の子である。

大人たちが、俺に似ている、あたしに似ている、と似くらべ合戦。

「そうら、おじちゃんに一番似とるに決まっとる」と私も参加。

「にい（義兄）さん、なんぼなんでもそらおかしいやないか。“○○海”はワイの娘の子やど」と異議を言う義弟。

「知らんかったなぁ」と私。

テーブル中央にデェーンと座る娘婿（むこ）は、つい先日までの神妙な顔がウソのようだ。存在感にあふれたいい顔になっている。

で、そっくりかえってタバコに火を付け、

「ウワァ！なにするの！タバコ・タバコ・タバコ」と女性軍の悲鳴に換気扇の下へ。　　　　　　　　

ヨコワ（別名メジ）は若魚（一二年物）とはいえマグロ。針にかかってもそう簡単には上がらない。がむしゃらに取り込み、直ぐに氷付けするのが魚体を傷めずおいしく食べるコツ。親マグロにまさる雅味あり。

船釣り。夏のビックリ。